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…何言ってんだこのおっさん。
「あの…それは私に実験台になれと?」
「ん~…ちょっと違うような気もするが…まぁそんなものだな。」
男は一旦移動しようと私を抱きあげて木陰へ向かった。
「このままでは、お互い倒れてしまう。」
まぁそれもそうだと思い、私は言う事を聞いた。
木陰に入ると、葉が身を寄せ合い日から私達を守ってくれた。
男はひやっと冷たい草の上に私をおろした。
「…でだ。君、名前は何て言うのかね?」
「っていうか…あなた誰?」
「おぉ、これは失礼。私の名前は桂木(カツラギ)だ。」
桂木は白衣の裏側から名刺を一枚取り出した。
桂木動人生態研究所…?
「…動人って?」
草の上に置かれたいつもより大きく見える名刺を覗きこみながら言った。
「人であり、動物である。って意味」
「人も動物だけど…」
「あー…動物は…だからつまり…」
桂木は人差し指をこめかみに当て眉をよせた。
「そうだ!アニマルの方だ。人間以外、だ。」
ピンッと指を立て嬉しそうに私を見た。
変な人…
「じゃあ私は今動人なのね?」
「そうだな。君みたいな人は他にもいる。」
「え?」
「私は君達が何故動人になってしまったのかを研究しているんだ。一回研究所へ来てみないか?
もしかしたら君が…そういえば名前は?私はもう名乗っただろ?」
「私は…音呼です。」
「ほう!犬なのに名前はネコか!それはまた珍しい。」
「私人間です…」
「お、そうだったね。失礼失礼…じゃあネコ君、どうだい?別に嫌ならいいんだ。」
傍から見れば桂木は犬に話しかける中年男。
しかし、たまに通る人が向ける冷たい視線など桂木は気にしていなかった。
…本当に変な人ね。
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