オレンジ膳

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【据え膳食わぬは男の恥】 実に良い言葉だ。これはよくチェリーボーイなんか当て嵌まるもので、ヤリチンはすでに悟りを開いている。ヤリチンと言えどもこうして良い言葉の通り生きているのだ。しかし今回のお話はヤリチンの話ではない 以前書いた小説「クソ坊ちゃん」にも登場したスチールウールの話だ、彼女いない期間と童貞を守り続ける期間が平行線をたどる青年が昔会社にいた。おおよそのルックスと特徴は「クソ坊ちゃん:童貞講座」を読んでいただければわかるのでここで説明するのはやめておこう。だが、これだけは言っておく、とにかくキモイ。イマイチ想像できない方は気持ちの悪いスチールウールだと想像していただければ簡単だ。もう会社から姿は消したのだが、キャラが濃い人間だっただけに伝説は数々残している。今日は「鎌倉オレンジタンクの巻」を紹介しよう。 数年前の夏、我々は社員旅行で鎌倉まで行ってきた。彼の正装は黒いTシャツを肩で捲くり上げ、青々しいジーパンの裾を深めに折って履く。イメージ的には13年前にキムタクがはいていたジーパンと例えておこう。ちなみに髪型は全盛期のシブガキ隊だ、ヤッ君ヤッ君。 しかしこの日のヤッ君はちょいと一味違う。白いシャツを羽織り、中に真っオレンジのタンクトップのみを着こなす。斬新なファッションだ。ヘアーはチリチリの天然パーマをぎとぎとのポマードでオールバック、見事に決めて登場してきた。ちなみに彼は昭和55年生まれです。さすがの私もビビっと来た。よっ!ロカビリー!と言った具合の彼だった。しかし不思議だ、彼の心境の変化は何なのか。コントのような衣装は社員一同気になっていたがあえて誰もつっこまなかった。しかし彼は口が痒い。聞いてもないのに話だした「後輩(女)にさぁ選んでもらったんだ」悪ノリも過ぎる程の衣装だ。そして彼は言う「その後輩にラブホ行きましょうって言われたんだ、でも付き合ってる訳じゃないし、断ったけど。オレ性欲だけで生きてないから」 ウソ臭いがホントであれば、彼にこのような好機は二度とないだろう。このことわざさえ知っていればスチールウールは違った道を歩いていたと思う 【据え膳食わぬは男の恥:すえぜんくわぬはおとこのはじ】 <解説>女性から積極的にもちからけれた誘惑に応じないのは、男性として恥であるということのたとえ。「据え膳」は、すっかり準備して目の前に置かれた食事の膳。
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