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そんな葉月の叫びに少女はあまり反応しなかった。
やっぱり、静かに聞いているだけだ。
少女は顔色を一切変えることなく、父じゃないと何度もつぶやく葉月に聞いた。
「それで、あなた様は何をお望みになられるのでしょうか?あなた様のお父上を殺した人間の情報ですか?それとも、辻斬りの真犯人の情報ですか?」
何の感情もない、ただ真っ直ぐな目で自分を見て聞いてくる少女に、葉月は戸惑いを隠しきれなかった。
少女のした質問にも、葉月は困らされた。
自分の父を殺した人間が知りたいのか。
それとも、本当の犯人が誰なのかが知りたいのか。
葉月はどちらだろうと自分に問いかけた。
自分はどうしたい?
…父の無実を証明したい。
なら、真犯人について知りたいのか?
…それだけか?
いや、違う。
葉月は父を殺した人間のことも知りたかった。
その人に会って、その顔を思いっきり殴りたい。
大切な父を殺したのだから。
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