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その笑みにサチヨは強い怒りを感じた。
その怒りは大きくふくらんでいき、恨みとも呼べるほどに大きくなった。
怒りが大きくなるにつれて、サチヨの頭に浮かぶ映像がふっと変わった。
包帯をグルグル巻かれ、白く寂しい部屋の中で眠り続ける男の姿。
その隣で、魂が抜けてしまったかのように生気のない目をした女の姿。
それがサチヨの頭に浮かんできた。
その映像にサチヨの中に悲しみが広がった。
その悲しみはだんだん怒りへと変わっていく。
2人の男を切った男に対する怒りは、サチヨの小さな体には持ちきれないほどの強い怒りとなった。
怒りは爆発してしまいそうなほど膨らんでいる。
サチヨはふっと息を吐いた。
息とともに怒りを吐き出して、自分自身を落ち着かせた。
なぜ、サチヨは葉月の依頼に手をつけず、こんなことを思い出していたのか。
怒りを爆発させそうになっていたのか。
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