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「……エリ?」
心配そうに名前を呼ぶ、低い声が耳に響いた。
夕闇に包まれた室内。
見ているだけだった視界に、月明かりが照らす天蓋がボンヤリと映りだす。
泣きながら放心していた絵理は、イーサンの声にゆっくりと瞬きをした。
涙が零れ、頬を伝う。
「……気にしないで。家族の夢……見ただけだから」
顔を見られないよう俯き、絵理はイーサンに背を向けた。
涙が、溢れて溢れて止まらない。
寂しくて仕方なくて……。
絵理は、寒くもないのに上掛けを抱えて丸くなった。
その震える小さな背中をイーサンは抱きしめる。
そしてまるで、宝物に触れるように、そっと絵理の頭を撫でた。
先程は『一人で寝る』と拒絶して……。
懇願されて仕方がなく、一緒に寝る事になっただけなのに。
(――……あったかい……)
その腕のぬくもりに、心が休まる。
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