9 揺れる想い

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  「……エリ?」 心配そうに名前を呼ぶ、低い声が耳に響いた。 夕闇に包まれた室内。 見ているだけだった視界に、月明かりが照らす天蓋がボンヤリと映りだす。 泣きながら放心していた絵理は、イーサンの声にゆっくりと瞬きをした。 涙が零れ、頬を伝う。 「……気にしないで。家族の夢……見ただけだから」 顔を見られないよう俯き、絵理はイーサンに背を向けた。 涙が、溢れて溢れて止まらない。 寂しくて仕方なくて……。 絵理は、寒くもないのに上掛けを抱えて丸くなった。 その震える小さな背中をイーサンは抱きしめる。 そしてまるで、宝物に触れるように、そっと絵理の頭を撫でた。 先程は『一人で寝る』と拒絶して……。 懇願されて仕方がなく、一緒に寝る事になっただけなのに。 (――……あったかい……) その腕のぬくもりに、心が休まる。  
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