1 月の扉

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「結婚かぁ‥‥いいな~‥‥」 そう言って、絵理はまた溜め息をついた。 これで何人目だろう? 仲の良かった友達が、結婚したり、出産したりするのは‥‥。 もう25歳にもなるのだから、それが当たり前なのは分かっている。 小柄で童顔で、とてもそんな歳には見られないが、自分だって確実に歳は取っていっているのだ。 いつまでも子供のまま、学生の時の様に、夢だけ追って生きてはいけない。 この仕事は好きだが、これだけで一生を過ごす訳にはいかない。 結婚して、子供を育てて‥‥。 そんな当たり前な、けれど堅実な未来に、本当はとても憧れている。 だけど…―― 「――…佐倉さん。ずいぶん遅くまでやってるけど…大丈夫?仕事は終わりそう?」 「へっ?あ…はい!大丈夫です!」 パソコンの前で考え込んでいると、夜勤の先輩ナースが声をかけてきた。 心配そうにしている先輩に慌てて礼を言うと、絵理は気合いを入れ直し、残った仕事に取りかかった。  
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