618人が本棚に入れています
本棚に追加
「結婚かぁ‥‥いいな~‥‥」
そう言って、絵理はまた溜め息をついた。
これで何人目だろう?
仲の良かった友達が、結婚したり、出産したりするのは‥‥。
もう25歳にもなるのだから、それが当たり前なのは分かっている。
小柄で童顔で、とてもそんな歳には見られないが、自分だって確実に歳は取っていっているのだ。
いつまでも子供のまま、学生の時の様に、夢だけ追って生きてはいけない。
この仕事は好きだが、これだけで一生を過ごす訳にはいかない。
結婚して、子供を育てて‥‥。
そんな当たり前な、けれど堅実な未来に、本当はとても憧れている。
だけど…――
「――…佐倉さん。ずいぶん遅くまでやってるけど…大丈夫?仕事は終わりそう?」
「へっ?あ…はい!大丈夫です!」
パソコンの前で考え込んでいると、夜勤の先輩ナースが声をかけてきた。
心配そうにしている先輩に慌てて礼を言うと、絵理は気合いを入れ直し、残った仕事に取りかかった。
最初のコメントを投稿しよう!