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結局、仕事が終わったのは深夜2時だった。
「――…う~…寒ッ!」
職員用の出入口から外へ出た途端、切るように冷たい冬の風が頬を掠め、絵理は思わず首をすくめる。
草木も眠る丑三つ時。
真夜中の寒さは身に染みるようで、絵理はマフラーをグルグル巻き直しながら駐輪場へと向かった。
夜勤をこなして行く内に、こんな時間に帰宅するのにも、もう慣れた。
実家から通えなくはなかったけれど、夜中に帰宅してばかりでは迷惑だろうと、絵理は近くのアパートに一人暮らしをしている。
帰っても、誰もいない真っ暗な部屋。
慣れたようで、けれど、こんな夜は無償に寂しい気持ちになった。
寒くて…。
寂しくて…。
無償に、誰かの温もりが欲しくなる。
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