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私が落ち着きを取り戻した時
沈黙続きの自分に
彼はまた語りかける。
「俺の事、思い出してくれた?」
「……」
思い出せずに黙っていると
彼は
微笑して続ける。
「先月くらい、キミの財布拾ったヤツだよ、俺」
それを聞いて
ようやく思い出せた。
私は思わず、声が上がる。
「あー!今度会ったら何とかの人!」
「そ。"偶然"に会ったらって人」
私の言い方に沿って
答えてくれた。
しかし、この人も
まだどんな人物か解らない。
今は優しく
接してくれていたとしても
先程みたいな事態に
なるかもしれない。
と考えるだけで
再び恐怖が私を襲う。
身の危険を感じた私は
逃げ出そうとした時―――。
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