第1章・きっかけ

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私が落ち着きを取り戻した時 沈黙続きの自分に 彼はまた語りかける。 「俺の事、思い出してくれた?」 「……」 思い出せずに黙っていると 彼は 微笑して続ける。 「先月くらい、キミの財布拾ったヤツだよ、俺」 それを聞いて ようやく思い出せた。 私は思わず、声が上がる。 「あー!今度会ったら何とかの人!」 「そ。"偶然"に会ったらって人」 私の言い方に沿って 答えてくれた。 しかし、この人も まだどんな人物か解らない。 今は優しく 接してくれていたとしても 先程みたいな事態に なるかもしれない。 と考えるだけで 再び恐怖が私を襲う。 身の危険を感じた私は 逃げ出そうとした時―――。
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