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「欠片のくせに、意気がってんじゃないわよ」 前に翳した掌に、霊力が集まり塊になる。そしてそれを至近距離で光輝の体の中にぶち込んだ。 「ぐっ!?」 光輝の体から何がが消えていくのが分かる。その嫌な気配が掻き消えていく。 抜けた瞬間崩れ落ちるその体を支えようとした夕鶴だが、流石に男の体を支える事が出来ない。 「きゃあ!」 倒れそうになる。しかも後ろは階段の為にバランスを崩して、体が大きく傾いた。 やばいと思ったのに、いきなりの事で言魂を使う事も出来ない。そのまま落ちていく。 「夕鶴!」 眞智が走り寄ってくる。しかし落ちているのは自分と光輝。彼女では支えられない。 体に襲い掛かる痛みを想像して目を閉じた夕鶴を、柔らかい風が包む。 「大丈夫か?」 いつの間にか支えていたはずの光輝は風に包まれて空中に浮いていた。 そして夕鶴は、翼を出した恢の腕の中にいた。自分が目を閉じている間に何があったのだろう。 「先輩?」 「大丈夫そうだな。よかった」 本当に安心したような彼の表情。それを見て、この状態が急に恥ずかしくなる。 「あ、あの!大丈夫なのでおろしてください!!」 赤くなる顔を隠すように俯きながら、恢に頼み込む。彼は首を傾げながらもちゃんとおろしてくれた。 「お疲れ様、夕鶴」 「ありがとう眞智」 「で、あの人どうするの?」 眞智に指差された先に居たのは光輝だった。風に纏われて空中に浮いたまま。 一瞬だけ考え込んだが、すぐにいつもみたいに面倒くさいという顔になる。 「保健室ね。私は、まだ汚れてるここを清めなくちゃ」 清めるというより負の気配に寄ってくる妖怪達を祓う結界を作るだけ。残滓しかないのなら、簡易の結界で十分だ。 「だから先輩、この人をお願いします」 「はぁ!?」 驚く恢を放置して眞智を引っ張る。彼女も何が起こったのか分からないまま引っ張られていた。
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