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光輝を保健室に連れていくという厄介事から逃げた自分達、二年生棟の端にある教室に来た。 「どうするの?」 「簡単よ。端にこれを置くの」 手の中には半透明な石が握られている。その見た事があるだろう石を見て、彼女は首を傾げている。 「それ、水晶よね?」 「えぇ。何かあった時用に毎日少しずつ力を貯めてたの」 夕鶴は水晶を見下ろす。どこにでも売っているそれは、自分の力を内に秘めている為淡く光っている。 水晶は元々、結界などを作るのに役立つもの。その他にもいろいろと退魔の法に使えるのを知っていた。 「これを端において、まずは一つ」 地面に置いた水晶は、自分が何もしなくてもゆっくりと床に溶けるようにして消えた。 「うわ、何あれ!?」 驚く眞智に苦笑する。彼女にはいろいろと教えてあげなければならないだろう。 立ち上がって違う場所に向かう自分の後ろを着いてくる彼女には、まだ何かが眠っている気がしてならない。 触手の件がそうだ。自分は気付かなかったのに気付いた。その反射神経というか洞察力というか。確実に人のものではない。 例えるのなら、恢と同じ妖怪の血を受け継いだ半妖独特のものだと思う。 「先輩に相談しなくちゃ」 彼女が力の覚醒を願ったとしても。自分は止めるだろう。力を覚醒させて傷付くのは、間違いなく本人なのだから。 「夕鶴?行くんでしょう?」 「あぁ、うん。ごめんね」 元気よく手を振りながら呼びかけてくる眞智を見ながら、夕鶴は笑う。 絶対にこれ以上、彼女をこちらに引き込むような事はしないようにしようと誓いながら。
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