02

42/71
前へ
/213ページ
次へ
「どうしたの?」 「考え事よ」 気にしないでと手を振ると眞智はそれ以上聞けないらしい。少し困ったように笑っていた。 壁を作ろう。彼女では絶対に越えられない、最後の砦になるような大きいものを。 それが例え彼女の悩みになったとしても、絶対に越えさせてはいけない。今ならまだ間に合うから。 せめて眞智だけは。少し霊感のある普通の少女でいてほしかった。 ―――――――――――――― 夕鶴が言うには校舎を線で結ぶ所に水晶を置けばいいらしい。最低三つ。四つが1番という事なので、四つ置く事にした。 校舎を囲むように埋め込んだ四つの水晶。最後の一つが埋め込まれた時、不意に何かに囲まれた気配を感じる。 みるみる空気が清んで行く。結界も張れて汚れを浄化出来るなんて、流石夕鶴の力だと思う。 「終わりね」 満足そうな彼女。自分とは桁が違う事くらい分かっていた。この全てを独学で身につけたというのだから凄い。 自分は最近力を手に入れたばかりで、しかも視る力だけ。こんな自分は彼女の為に何が出来るのか。 壁があるのは知っていた。自分には越えられない巨大な壁が。どうしたら越えられるのか。どうしたら横に並べるのか。 不意に体の最奥で何かが揺れる。熱い熱い、青白い炎のような。意識をそれに集中させて、頭の中で触れようと――――。 「眞智」 「……あ」 夕鶴に呼ばれて、体の奥の炎がへ消えた。もう少しだったのにとうなだれた眞智は視線を上げて驚いた。 彼女の瞳はこちらを見ていた。怒りや不安、何もかもが綯い交ぜになったような色。 「夕鶴?」 「帰りましょう」 自分の言葉を遮るように目を逸らす。それに違和感を感じたが、眞智は何も言わなかった。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加