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「どうしたの?」
「考え事よ」
気にしないでと手を振ると眞智はそれ以上聞けないらしい。少し困ったように笑っていた。
壁を作ろう。彼女では絶対に越えられない、最後の砦になるような大きいものを。
それが例え彼女の悩みになったとしても、絶対に越えさせてはいけない。今ならまだ間に合うから。
せめて眞智だけは。少し霊感のある普通の少女でいてほしかった。
――――――――――――――
夕鶴が言うには校舎を線で結ぶ所に水晶を置けばいいらしい。最低三つ。四つが1番という事なので、四つ置く事にした。
校舎を囲むように埋め込んだ四つの水晶。最後の一つが埋め込まれた時、不意に何かに囲まれた気配を感じる。
みるみる空気が清んで行く。結界も張れて汚れを浄化出来るなんて、流石夕鶴の力だと思う。
「終わりね」
満足そうな彼女。自分とは桁が違う事くらい分かっていた。この全てを独学で身につけたというのだから凄い。
自分は最近力を手に入れたばかりで、しかも視る力だけ。こんな自分は彼女の為に何が出来るのか。
壁があるのは知っていた。自分には越えられない巨大な壁が。どうしたら越えられるのか。どうしたら横に並べるのか。
不意に体の最奥で何かが揺れる。熱い熱い、青白い炎のような。意識をそれに集中させて、頭の中で触れようと――――。
「眞智」
「……あ」
夕鶴に呼ばれて、体の奥の炎がへ消えた。もう少しだったのにとうなだれた眞智は視線を上げて驚いた。
彼女の瞳はこちらを見ていた。怒りや不安、何もかもが綯い交ぜになったような色。
「夕鶴?」
「帰りましょう」
自分の言葉を遮るように目を逸らす。それに違和感を感じたが、眞智は何も言わなかった。
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