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―――――――――――――― 「分かった」 「あ、待て鴉島井!」 立ち上がりかけた恢を呼び止める。迷惑そうな顔で振り向いた彼はいつもと酷く違っていて、少し戸惑う。 あの時のような軽いけど優しさの混じったような恢であれば、普通に話せるのに。 「んだよ、用ねぇなら帰るぞ?」 「ある。……夕鶴ちゃん、大丈夫か?」 自分の意識がない間に、もしかして夕鶴を傷付けたのではないか。そう思って聞いてみる。 しかしそれを口にした瞬間、部屋の空気が一気に鋭くなった気がして息を呑む。 ひやりとした何かが首筋に当てられ、目の前には鋭く光輝を睨む彼の顔が。 「好きな女傷付けようとして、大丈夫かだと?お前、ふざけるのもいい加減にしろ」 「俺だって傷付けたくて――――!」 喉元に腕が近付けられる。そこでようやく、自分の首筋に恢の腕が突き付けられている事に気付いた。 ただの腕じゃない。風の刃を纏わせた剣を突き付けられている。その証拠に首から血が垂れたらしい。 「彼女は諦めろ。お前じゃ釣り合わねぇ」 ゆっくり離される腕。それが刃を纏っていないのに気付いて、半ば無意識にそれを掴む。 彼の顔が驚きに染まる。だがそんなのを無視して、その体をベットに押し倒す。 「いっ!?」 動けないように馬乗りになってから、自分は出来るだけ冷たい目で恢を見下ろした。 「お前は彼女のなんだ?彼女が好きか?それとも、彼氏か?」 「……両方違うな」 「ならお前にどうこう言われる筋合いはない。悪いが、俺は本気だ」 そこまで言うと彼の上から離れる。こんなところを見られて誤解されたくない。 ため息を付いて保健室を出ようとした時、恢の押し殺した笑い声が聞こえた。
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