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夕鶴と眞智はあの校舎に結界を張り終えた後、残りの授業に出る事にした。
自分は面倒だから帰りたかったのだが、眞智に無理矢理引っ張られてきたのだ。
「そういえば、なんであの時誰も来なかったの?」
あの時。それは多分、光輝との戦いの時の事だと思う。派手に暴れたのに恢以外は誰も駆け付けてこなかった。
何も知識のない眞智が不思議に思うのは当たり前の事で。夕鶴はそちらに視線を向けて話し出す。
「ああいう事はたまにあるの。力の強いものと戦う時は、異空間みたいな場所に飛ばされる事がある」
小声で話す。回りの人に聞こえてしまったら、今までの苦労が水の泡だから。
「私はあれを異界って呼んでるわ。常世でも現世でもない、その狭間。だから異界」
異界だと呼んでいるのは自分だけ。他に名前がある可能性の方が高い。
眞智は分かりやすい。表情を見ていたら何を考えているのか、大体は分かってしまう。
きっと普段と何一つ変わっていなかった。そう思っているのだろう。
「私も最初は気付かなかったのよ。でも三回くらい経験したら、眞智でも違いが分かるはずだわ」
「夕鶴はもう分かるのね?」
「えぇ、今までも何回かは引っ張り込まれたから」
小さい時からそういう経験ばかりしている。嫌でも違いは分かってしまう。
「凄いわねー」
「あら、ありがとう」
霊や妖怪絡みの事で、今でも思い出したくないような最悪なものは沢山ある。
それでもこうやって彼女が凄いと言ってくれるなら。それでもいいかもしれない、なんて思うのだ。
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