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すまし顔で彼女達に近寄り、眞智の横に腰を下ろす。彼らは飲み物しか頼んでいなかったのか、机には空のグラスが二つだけ。
「待たせてごめんなさい」
「気にしないで」
眞智が笑ってそう言ってくれる。恢も別にそんな事は気にしていないらしい。
ありがとう、と頭を下げた後に本題に入る。ここにいる全員が恢に呼ばれていた。
「大野はただ欠片に憑かれただけと俺は言ってたな?」
二人が頷くのを確認して彼は机の上に何かを出す。夕鶴が顔を近付けて見ると、それは古い鏡の破片のようだった。
「鏡?」
「あぁ。今回の敵は少し厄介だ。なんせ神と名の付くものだから」
恢の言葉と目の前に置かれた古い鏡の欠片。何のヒントにもなっていないように思う。
ただそれは徒人からしてだ。知識のある霊力者なら、この二つだけでも答えはすぐに分かる。
そして恢は自分なんかよりよっぽど賢くて知識があった。見ただけでこの危険に気付いたのだろう。
「そうか、付喪神か」
「その通り」
眞智だけ分かっていない。つい最近視れるようになったから当たり前かもしれないが。
そんな彼女にやっと気が付いたらしい恢が、ため息混じりに説明をしだす。
「付喪神って言うのはな、長い年月を経て古くなったり長く生きた道具や生き物に宿る霊や神の総称の事だ。荒ぶれば禍を、和ぎれば幸せを齎す(もたらす)と言われている」
彼の長々とした説明に苦笑が浮かぶ。眞智は聡いから分かるだろうが、こういう説明は控えた方がいい。
分からない人はこれでも分からないし、難しいと投げ出してしまう可能性だってあるのだから。
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