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「扱いがよければ幸福を、扱いが悪ければ不幸を。それぞれ使い方によって齎す事が変わってくる」
いきなり先程の説明を簡単に纏め出した為か、恢は一瞬だけ驚いたように自分を見る。
それに笑顔を返す。何を言っても無駄だと理解したのか、すぐに彼の視線は鏡の欠片に注がれた。
「こいつは荒ぶった方だな。禍を齎す付喪神だ」
とてつもなく面倒な事になった。先程恢が言っていたように、付喪神は妖怪だが名前に『神』と付く。
今回の敵も一筋縄ではいかない相手らしい。出来ればもっと簡単に倒せるような敵を相手にしたいのに。
「今日行きましょう。先延ばしにしない方がいいわ」
「分かってる。そのつもりだ」
「私も行くわ!」
眞智が名乗り出る。来ると思っていた自分の表情はきっと冷たいものになっているだろう。
「眞智は駄目。留守番よ」
「……え?」
突然の言葉に驚いたのは、当事者である眞智だけじゃない。何故か恢まで驚いている。
まさか夕鶴が眞智を置いていこうとするなんて思わなかったのだろう。
「待ってよ夕鶴。私も行きたい!」
「あのね、私達は化け物退治に行くの。貴方を守って戦うには限度があるわ。そんな時、貴方に何が出来るの?」
自分の身を自分で守れるのかと問い掛けると、明らかに眞智が返答に困っているのが分かる。
守れる訳がないと知っていた。彼女には視る以外の力、戦う為の霊力は全くないのだから。
「……夕鶴」
「大人しく家で待ってて。ちゃんと終わったらメールするわ」
行きたいとその表情は告げているが、それを無視して出来るだけ優しく微笑んだ。
眞智の事はよく知っている。だから彼女が反論出来ない言葉もちゃんも分かっている。
大人しくなった眞智を見ていると、恢から視線が注がれている事に気が付いた。
何かを探っているような眼差し。しかしそんなものを向けてきても意味がない。
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