02

54/71
前へ
/213ページ
次へ
準備と言ってもする事はほとんどない。必要なのはやる気だけ。それだけで自分は強くなれる。 叉玖と共に家を出た夕鶴は、空を見上げながら不意に思う。今は俗に言う黄昏時と呼ばれる時間帯だった。 「確か、こういう時を逢魔が時って言うのよね」 何と言うか、酷く不吉な時間帯だ。こういう時に出歩くのはあまり好きではないのだが。 仕方ない。ただ家を出た時間がそれとばっちり被ってしまっただけなのだから。 「行くわよ、叉玖」 『……ニィ』 ここまで来たというのに、まだ止めたいらしく。叉玖の返事は不機嫌なものだった。 どうやらこの獣の機嫌はしばらく直りそうにない。夕鶴は苦笑を浮かべてしまう。 一人で寂しく学校に向かう。この時間帯なら誰も学校に居ないはず。教師は居るかもしれないが、生徒会棟は空だろう。 ふと夕鶴は回りを見る。いつも着いて来ているあの浮遊霊。珍しく、今はその姿を見る事がない。 どこに行ったのか気になった。付き纏われないのならそれはそれでいいのだが。 「まぁ、いいや」 今は一刻も早く学校に着きたい。恢が留守に気付く前に。自分一人の力を試したいが為に勝手な行動を取る。 それを恢が知ったらどうするのか。追い掛けてくるか、愛想を尽かされるかだろう。 どちらもいい事だとは思えない夕鶴は小さくため息を付くだけにした。 考えても無駄な事は考えたくない。今は敵を倒す事だけに集中しようと、学校に視線を向けてそう決めた。 遠目からでも分かるほど生徒会棟が禍禍しい霊力を纏っているのが見えた。少し不安になる。 勝ち目があるとか作戦がどうとか、何もない。ただ自分の力と守護してくれるオサキ狐の力を信じているだけ。 その信じるという気持ちだけで、夕鶴にとっては十分な力になる。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加