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教師に気付かれないように校舎に入る事は出来た。出来たのだが、困った事が一つ。
今朝も見たあの成れの果てが、夕鶴を見た途端一斉に襲い掛かってくるのだ。
付喪神に気付かれたのか、それとも元々そういう風に操られているのかは分からない。
だがこちらとしては、早く生徒会棟に向かいたいのにそれが出来なくて苛々する。
「〈消えろ〉!」
言葉に篭められた霊力に触れた成れの果て達が、ボロボロと崩れて消えた。
それでも量が多過ぎて中々減らない。叉玖も手伝ってくれているのだが駄目だ。
「……面倒ね」
付喪神と戦う前から霊力を消費する事は避けたかったが、これでは出し惜しみしている場合ではないらしい。
「仕方ない。叉玖、戻りなさい」
狐火を纏いながらあれらに突撃して存在そのものを吹き飛ばしていた叉玖は、すぐに夕鶴の元に戻る。
自分の髪が風もないのに舞い踊る。体から発された霊力の風が、全てを一瞬で塵にした。
成れの果てが掻き消えたので、邪魔するものが何もなくなった。その廊下を走って生徒会棟に向かう。
「よかった、やっぱり連れてこなくて」
あれだけ大量の成れの果てがいたら、眞智を庇いながらの戦いは難しい。自分の判断は正しかったのだ。
成れの果てはほとんど消したので恢が来ても楽に倒せるだろう。その方が楽でいいし、それに彼が来る事はないと思っている。
まだしつこく襲ってくるものに霊力を叩き付けては倒してを繰り返す。いい加減面倒になった時、目的の生徒会棟が見えてきた。
そこの前で立ち止まって、大きく深呼吸をする。緊張している自分を落ち着かせる為だ。
それにしてもやけに生徒会棟は静かな気がする。成れの果ての気配さえどこにもない。
「さっさと来いって事?」
喧嘩を売られているのか、それとも付喪神の詰めが甘いのか。嫌な予感はしているが、今更だから気にしていられない。
「よし!」
一度気合いを入れ直してから、夕鶴と叉玖はその生徒会棟に入っていった。
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