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体が浮く。幸い障壁のお陰で貫かれる事はなかったが、夕鶴の軽い体はすぐ後ろに吹き飛ばされる。 「……うぁ!」 物はないが、壁はしっかり存在している訳で。ぶつかった衝撃のせいでしばらく動けない。 頭をぶつけてしまったのか、少し目の前がぼやける。それでも必死で壁に手をついて立ち上がった。 この攻撃は効いた。障壁にもダメージはあるようで綻びが目立つ。それに手を当てて直すと、再び夕鶴は鏡に向かっていく。 自分は恢のように物理的な攻撃技がある訳ではない。武器といっても、あるのは符だけ。 言魂と霊力は応用次第ではなんにでもなると聞いた。自分もそれを覚えなくてはこれからが大変だ。 「〈切り裂け〉!」 叉玖に向かっていくものと自分に向かってくるものを見て、夕鶴は叫ぶ。 目の前にまで迫ったそれが綺麗に切り裂かれた。叉玖の方もまた同じ。こういう使い方だ。後は自分の想像力次第。 「叉玖、こっちへ」 予想以上に叉玖への負担が強いのを見て、彼を呼び戻す。素早く戻ってくる叉玖と自分を守る壁を作ると彼に手を翳す。 「〈此のものを癒せ〉」 掌から柔らかい光が降り注ぎ、叉玖の疲労を全て取り除いた。不思議そうに自分を見上げるオサキ狐に、小さく笑いかける。 「傷くらいなら、いつでも貴方を癒してあげる。だから死なないように気をつけて」 一つ頷くと彼はすぐに目の前の敵に飛び掛かっていく。夕鶴も自らを守っていた障壁を解く。 叉玖はなにもなしでがんばっている。自分も同じように命懸けで戦おう。なりふり構っていられない。 力を解放する。向かってくる触手は、螺旋状の光によって跡形もなく破壊されていく。 敵に目を向けて覚悟を決める。この場所は異界の中だ。どれだけ壊しても現世には何も起こらないはず。
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