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気持ちを落ち着かせて、自分の中にある霊力を練り上げる。小さな塊に凝縮したその威力は多分、凄まじいものになるだろう。 「〈破壊せよ〉」 夕鶴の言魂を受けたその塊は、凄いスピードで真っ直ぐ鏡に向かっていく。 地面をえぐり、触手達を吹き飛ばしてただ一直線に。夕鶴の考えた新たな攻撃だ。 自分の力が底無しなら、ちびちび使うより大量に使った方が威力は上がる。ただ練り上げるのに時間がかかるし作り上げる為には気力も相当必要だ。 集中という事が大の苦手である自分ではそう何発も打てるものじゃない。だからこの一撃で決めるつもりだった。 「行け!」 勝てる。夕鶴は心の中でそれを核心していた。これだけ強い力に鏡が堪えられる訳がない。 触手を吹き飛ばしながら鏡に向かっているのだ。どうやってもこの攻撃を防げないはず。 鏡に霊力の塊がぶつかる。凄まじい力が砕け、夕鶴の元までその眩い(まばゆい)光と風が吹き付ける。 「くっ!」 顔を庇う為に両手を前に翳す。何も見えなくなるが仕方ない。風に耐え切れなかったのか、教室の窓硝子が粉々に砕け散る。 叉玖が自分のすぐ側に来た事が気配で分かる。風に耐え切れなくなりそうな体を支える為だろう。 中々止まない風。自分はどれだけの力を練り上げたのか。二本の尻尾に守られながら、夕鶴はそれが止むのを待つ。 流石にこの力を前に、付喪神の成れの果ても堪えられない。光が消えたら粉々に砕けた鏡の破片が残っている。そう思っていた。 凄まじい光と風が収まったのを確認すると、夕鶴は目を開けて前を見る。 「……え?」 その瞳に映ったのは傷一つない鏡。そして真っ直ぐ向かってくる触手。いきなりで何も出来ない夕鶴の体を触手が貫いた。
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