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恢が異変に気付いたのは、自分元に浮遊霊が現れたから。珍しく慌てているそれに違和感を感じて問い掛けてみる。 「どうした?」 『アノコ……タス、ケテ』 弱々しい声。前のように聞き取りにくいし主語がない。それでも何を言いたいのか分かる。あの子とは夕鶴の事だ。 「姫か!?」 『タスケテ……』 浮遊霊はそう言うだけ。夕鶴の身に何があったのか分からない。慌てて家から飛び出す自分の後をそれは着いていく。 夜には迎えに行くと言ったのに、彼女はどういうつもりなのか。風を纏って夕鶴の家へ向かう。 「姫、姫!!」 玄関にたどり着いてチャイムを押す。ついでに呼び掛けのだが中から何の気配もない。 『ガッコウ、ニ』 不意に後ろから聞こえた言葉は、多分彼女のいる場所。ならわざわざここに行かなくてもよかったのではないか。 ついついため息が漏れてしまうが、早く行かなくては大変な事になりそうだ。 余り力の使いすぎはよくない。しかし今は緊急事態の為に仕方ないと考え直して、恢は再び駆ける。 巫女姫の身に何かあってからでは遅い。力が尽きてしまえば、夕鶴に力を与えてもらえばいい。 考え事をしていた自分の視線の先に、見覚えのある姿が見えた。長い茶髪の少女が門の前に立っている。 「……眞智?」 体を跳ねさせた彼女が振り向く。そして恢の姿を見付けた瞬間、思い切り嫌そうに眉を寄せていた。
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