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「あぁああ!!」
体中の血が沸騰するような感覚と、体が内側から引き裂かれそうな激痛が走る。
つい絶叫して倒れ込む眞智を気遣いながらも、恢は成れの果てと戦う為に駆け寄れない。
痛い、痛い。体が引き裂かれてしまいそうだ。覚醒というのはこんなにも辛いものだと知らなかった。
『……主』
不意に、体の中から何かの声が聞こえたような気がした。深い優しさを込めたような、美しい声。
主と呼ばれたのはきっと自分の事だろう。という事は、今の声は眞智の中にある力が発したのか。
「誰?」
問い掛けても答えは返ってこない。その瞬間、体中に走っていた痛みが頭と臀部に移った。
「ぁああぁあ!!」
眞智は再び叫ぶ。それに恢の怒号が混ざり、静まり返った学校内に叫び声が響き渡る。
始まりは突然だった。だが、終わりもまた突然で。いきなり消えた痛みの後でも余韻のせいで動けなかった。
「……眞智?」
恢の戸惑い気味の声が聞こえる。気が付いたらもう成れの果てはどこにもいない。
首を傾げた眞智は体の違和感に気付き、頭に手を当てる。そこにあるふさふさした何かに触れて目を見開く。
「頭見るより、後ろだな」
苦笑しながら言われた言葉に恐る恐る振り向くと、真っ白な九本の尻尾が揺れている。
「……え?」
「覚醒したんだな、お前」
これが覚醒。妖怪の血を継ぐ者独特の姿。それらは半妖と呼ばれ、覚醒したらその姿は人と呼べなくなる。人にも妖怪にも属さない曖昧な者だ。
いつだったか、夕鶴がそう言っていた。自分は九尾の狐という妖怪の血を継いでいるのだと何故か分かった。
「わぁ、凄い」
漲ってくる力。それを表に出すと青白い炎が自分を囲うように現れ、襲い掛かってきた成れの果てを燃やし尽くす。
「よし、姫んとこ向かうぞ」
「はい」
翼を出した恢と、尻尾と耳を出したままの眞智は再び走り出した。目指すは生徒会室だ。
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