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眞智の覚醒を終えて、自分達は生徒会室にたどり着いた。その扉に手をかけた時、眞智の耳がぴくりと反応する。
「先輩、変じゃないですか?」
「変?」
「先に来てるはずの夕鶴の戦ってる音がしないんです」
言われてみればそうだ。戦っているはずなのに、この中からは何一つ物音がしていない。
慌てて生徒会室に入る。彼女もその後に続いて入り込む。確かに、奥の部屋で光輝は意識を失ったと言っていた。
「姫!」
中に入って回りを見ても、付喪神どころか夕鶴の姿さえどこにも見当たらない。
彼女の気配や霊力の残滓は残っている。それなのに、肝心の姿だけがどこにも見付からないのだ。
「……どこに」
眞智が呟く。彼女も自分も見つからないなんて考えていなくて。ここに来れば彼女に会えると信じて疑わなかった。
「そうだ、異界ですよ先輩!」
「異界?」
聞いた事のない言葉に首を傾げる。眞智は夕鶴が話していた事を全て話してくれた。
異空間に連れていかれた経験は自分にもある。その説明を聞いただけですぐに理解出来た。
「そうか、異界。その呼び名は思い付かなかったな」
変なところで納得して、目を閉じると回りの気配を探る。霊力の無駄遣いはしたくないのだが、これは仕方ない事だ。
違和感は感じるが細かい場所までは探れなかった。となると、役に立つのは後ろにいる眞智しかいない。
「眞智、姫の匂いを探ってくれ」
「匂い?」
「お前は狐の半妖だ。なら、鼻がいいだろ」
突然過ぎただろうか。きっと彼女は夕鶴の匂いなんて覚えていない。表情がそう訴えている。
しかし今はそんな事を言っている場合ではない。一刻も早く見つけださなければならないのだから。
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