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それでも必死で思い出そうとしているのか、眉間に深い皺を作ったまま眞智は目を閉じた。 集中する邪魔にならないように少し彼女から離れる。半妖である自分の匂いは、夕鶴の匂いを消してしまうから。 「……臭い」 「はぁ?」 「いろんな匂いが入り交じってて分かりにくいです。けど、その匂いが1番きついのはあそこ」 そう言って指した場所は、光輝があの鏡を見付けた場所だった。そんな事までは知らない恢が、ゆっくりとそこに近寄る。 「……あった」 「何がです?」 手元を覗き込んでくる眞智を一瞥して、恢は自然を下げる。そこには空間に裂け目が出来ていた。 本当に小さな、小指ほどの裂け目。そこから凄まじい程の霊気が溢れている。何故今までこの力に気付かなかったのか。 ため息をついてから周りに散らばっている物体に視線を向けた。これを見付ける為に移動させた物だ。 「原因はこれだな。いろいろな霊具ばかりだ」 視線の先にある扇を何となく手に取り、一回軽く振ってみる。その瞬間、突風が部屋の中に吹き荒れて道具を今より散乱させた。 「……凄い」 眞智が呟き、やばいと感じた自分が扇に視線を落とすのはほぼ同時。ここにある物は全て強い力を宿している霊具らしい。 何故それがここに、こんなに無造作に置いてあるのかは置いといて。今は夕鶴の救出が先。 そう考えて、扇をポケットに突っ込む。そしてその裂け目に手を伸ばした。 激しい音がして手が押し返されそうになる。だが離す訳にはいかない。ここを通らなければならないから。 「先輩、何を?」 「ここを広げねぇと向こうに行けない。助けろ」 言葉少なに説明する。あまり理解していないようだが、とりあえず眞智も同じように手を入れてきた。
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