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凄い力で押し返されるが、抗えないほどではない。恢と同じように広げようとすると、少しずつ裂け目が広がっていく。
「よし、もう少しだ」
恢の言葉を聞きながら、眞智は再び広げる事に集中する。そうしないと弾かれそうだ。
人一人が通れるくらい広がった裂け目を見て、彼がいきなりその中に飛び込む。
「え!?」
流石にその行為に眞智は驚いたが、香る匂いに気付いた。この中に夕鶴は居る。そう思うと、勇気が湧いてくる。
彼女を守りたい。なら、まずは彼女の元に行かなくてはならないのだ、迷っている暇はない。
「すぐに行くから!」
そう自分に言い聞かせるように叫んでから、眞智は躊躇う事なく飛び込んだ。
景色が歪む、気持ち悪い感覚に顔をしかめる。しかしそれは不意になくなった。
堪えられずに膝を付いた眞智のすぐ横を、突風が吹き抜けた気がした。
――――――――――――――
「姫!」
恢の慌てた声と、そちらを見た眞智の叫びが夕鶴の耳に届く。
あの時、貫かれると思って半ば無意識に横に避けた。そのお陰かは分からないが、触手は脇腹に深い切り傷を残すだけ。
貫かれるという最悪な状況は回避出来たのだが、その痛みに一瞬怯む。
触手は相変わらず自分を貫こうと向かってくるから、休む事も出来ない。
「〈拒め〉」
作り出した障壁のお陰で襲い掛かってくる触手から守られているが、脇腹からは血が溢れる。
痛みと苛立ちで舌打ちをした夕鶴の目の前。そこに、見覚えのある影が入り込んできた。
「姫に触れるな、馬鹿野郎!!」
怒声と共に吹き飛ばされる触手。その人物を見て、自分はただ目を見開く。
そこに居たのは恢だった。絶対に来ないと思っていた彼が、今目の前にいる。
「姫!」
血の出てる脇腹を見たのか、恢が叫ぶ。その声に被さるように、後ろから悲鳴が響いた。
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