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ある休日の昼頃、夕鶴は困り果てていた。その原因は目の前に座っている女性。 朝、いつもの様に浮遊霊達に起こされた夕鶴は退屈していた。眞智は今日、昼から塾があるので遊べない。恢は連絡先が分からず断念。 光輝からは一応連絡先は教えられていたが、あんな事があったから会いたくない。 「暇ねぇ、叉玖」 あの付喪神の事件からは、とても平和だった。だから暇だと言っていられる。忙しくないって素晴らしい。 もう夕鶴の脇腹の傷も一応は癒えている。多分一生傷痕は残るだろうが。 そんなぐうたらしていた自分の一日は、この女性によって潰されたのだ。 いきなり訪ねて来たかと思えば、自分は夕鶴の親戚で頼みたい事があると言われた。 そんな事を言われても、こちらとしては意味が分からない。この人の名前は確か……。 「三木 咲衣(みき さくえ)さん、でしたよね?」 びくりと体を跳ねさせた後、彼女はゆっくりと頷いた。怖ず怖ずとしたその動作に首を傾げる。 三木咲衣。確かに彼女は自分の親戚で、両親が生きていた時に何回か会っていた。綺麗な黒髪をした、日本美人と言う言葉がぴったりの女性。 「それで、親戚さんが何の用?」 「あの。お願いが、あって」 怖ず怖ずとしている原因が夕鶴への後ろめたさなのだと、とっくに気付いている。 両親が事故で死んだ後。親戚の者達は皆、自分を引き取る事を拒否した。 気持ち悪いや化け物だからというような理由で、夕鶴は施設に送られたのに。今更現れてお願いがあるなんて、虫が良すぎる。 そう思うから、夕鶴の咲衣に対する態度は酷く冷たかった。そして彼女もそれを受け入れている。
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