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猛と言ったか。夕鶴はその少年を見る。深い青の瞳は遠くから見たら黒と変わらない。光の加減と距離によっては徒人に見えるだろう。
問題は彼が霊力者なのか半妖なのかだ。霊力者の中にも瞳や髪の色が変わる人も居るが、それはごく一部。
なら彼は半妖と考えた方がいいのかもしれないが、半妖らしさがまるで感じられない。
「……何だよ」
見ている事に気付いたのか、猛が睨み付けてくる。しかし全く怖くない。自分達のような霊力者は人間を恐れないから。
だから睨み付けられても怯む事はない。そんな態度が気に食わないのか、彼は舌打ちをして視線を逸らした。
「そういえば、貴方名前と年齢は?」
始めはここからだろう。一緒に住むのだから、一応知っておいた方がいいに決まっている。
「誰がお前に教えるかよ。馬鹿じゃねぇの」
あまりにもな言い方に夕鶴が固まった。自分の変な様子に気付いたのか、浮遊霊達が集まってくる。
先程までは目を細めていたが、それを見た猛は目を見開いて浮遊霊を指差しながら絶叫した。
「うわあぁぁあ、化け物!」
「……ただの浮遊霊よ」
ため息混じりにそう言うと、彼は信じられないというような目を向けてくる。
「お前、この化け物が見えんのか!?」
「見えるもなにも、彼らを連れてきたのは私よ」
徒人とあまり変わりないようだ。知識もない、ただ視る力があるだけの存在。
彼への興味が急激に萎んでいく。視る力があっても知識がないなら同じ。そして何より、見えるのに怯えるのは1番危ない。
「貴方、いつか神隠しにあいそうよね」
夕鶴としてはただの可能性を言ったまでだ。あくまで可能性だったのに、彼は真っ青になって震え出した。
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