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それから何とか混乱している猛を落ち着かせて、椅子に座らせる事が出来た。その時には疲れきっていたが。 「それで、貴方がここに預けられた理由を全部教えて」 「……理由なんてねぇ」 そっぽを向く猛に、夕鶴はため息をついた。中学生だから仕方ないだろうが、性格が子供だと思う。 あまり子供の相手をした事がないので、どうやって警戒心を解かせたらいいのか分からない。 「分かった。理由はいいから名前と年齢だけは教えて」 「三木猛。歳は十五」 「そう、じゃあ中学生ね。次に……」 「おい」 夕鶴の言葉を遮るようにして、猛が声を掛けてくる。おいというのはどうかと思うが、初日だから大目にみよう。 「何?」 「あんたは?」 名前と年齢の事だろうか。自分は言ったのだから、そちらも教えろという事らしい。 口の悪さと態度の悪さについては後で注意する事にして、夕鶴はとりあえず笑顔を作る。 「私は姫崎夕鶴。歳は貴方の一歳上。よろしくね」 よろしくと言っても反応はない。自分で聞いてその態度でいいのか。苛立っているが、表には出さない。 まだ一日目の訳だし、これから仲良くなっていく為にも怒る訳にはいかなかった。 「学校どこ?クラスは?なんで霊が見えるようになったんだ?」 矢継ぎ早に質問されても、夕鶴は丁寧に答えていく。そうしていく間に、彼は興味のある人間には質問するのだと分かった。 答える度に猛の顔が輝き、態度もどんどんよくなっていくと気付いたから。 「じゃあ、姫崎さんも俺と同じなんだな」 夕鶴が霊力者だという事と霊力者についての説明をした後に、彼は少し嬉しそうにそう言った。 「そういう事ね。さて、私の事はこれでおしまい。次は貴方よ」 さっきまでの刺々しい猛はもう居ない。今なら、先程は聞けなかった事を聞いても多分答えてくれるはず。
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