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「なんで預けられたの?」
「神隠しに追われてるから」
神隠しに追われてる。その言葉と先程の態度から大体想像は出来た。彼のように視るだけの人間は連れて行きやすいのだろう。
世の中には三種の霊力者が居る。一つは夕鶴のように見て、触れて、話せて、祓える者。
もう一つは恢や眞智のように、半妖と呼ばれる者。彼らも同じように見て祓える。
そして最後は、猛のように見る事しか出来ない者。彼らはそれしか出来ない。ただ見るだけ、向こうの言葉も分からないし祓う事も出来ない。
霊達も馬鹿ではないから自分達を祓えるような霊力者は狙わないのだ。狙うのは視える事に怯え、視えたものにも怯えるような人物。
「狙われやすいでしょうね、貴方」
彼からはそこまで霊力を感じない。だから祓う力を付けるというのも無理な話だ。
ため息混じりに夕鶴は立ち上がる。彼にも学校はある、何か渡しといた方がいい。
「……そういえば猛。貴方、学校はどうするの?」
「前の家とここは近いから、歩いて通える」
「そう」
なら心配ない。預けられる間は学校に行かないという事になっていたら流石に罪悪感がある。
だが通えるのなら何の問題もない。あるとすれば、その神隠しという存在だけ。
「ちょっと待ってて」
確か自分の部屋に今は使っていない数珠か何かがあったはずだ。夕鶴の身につけていた物は、それだけでも退魔の力が宿る。
だから、神隠しがどれくらいの力を持っているのか確かめるにはちょうどいい代物だろう。
「どこかな?」
押し入れの中のものを引っ張りだして探す。だが、どこに仕舞ったのか分からないので中々見付からない。
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