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「あ、着いていくよ!」 いつの間にか刺々しさがなくなっている猛。夕鶴を見る眼差しは輝いているように見えた。 自分の持っている膨大な霊力とその知識を尊敬しているらしい。あまり有り難くはないが。 「そうね、結構大量に買うから来てもらえる?」 笑いかけると、彼も人懐っこい笑顔を返してくれた。始めの刺々しい態度は多分、人見知りか何かなのだろう。 一度慣れてしまうと、可愛い子犬のような愛らしさがある。見ているだけで癒された。 「着替えてくるから待ってて。後、猛の荷物は?」 「持ってきてるから大丈夫。どこに置いたらいい?」 そう聞かれて少し考え込む。空いている部屋なんてあったかと、頭の中で探す。 「あぁ、畳の部屋でいいなら空いてるわ」 「どこでもいいよ。そこでいい?」 「えぇ、誰か教えてあげて」 浮遊霊に向かってそう言うと、猛の顔が引き攣った。まだ少しも慣れていないらしい。 だが夕鶴はそのまま自分の部屋に向かう。ここに住むのなら、彼らに慣れなければならないから。 「お、お願いします」 後ろから固い声でそう聞こえてきて、つい笑ってしまう。彼はおもしろい。不思議と一緒に居ても嫌な気はしてこない。 「懐かしいって思いがあるのよね」 もしかしたら、いつか会っているのかもしれない。咲衣とはよく交流があったはずだ。 しかしそれも随分と昔の話で。そんなくだらない事、今の自分には全く関係がない。 ため息を付きながら着替える。そういえば、今の今までパジャマ代わりのジャージだった。 派手過ぎない柄のTシャツに黒のジーパン。シンプルなその格好は、夕鶴の買い物用だ。 買い物の為だけにお洒落をするのもどうかと思うから、いつも軽い格好しかしない。
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