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次の日、まだ七時が過ぎたばかりの時間に猛をたたき起こす。当たり前だが、彼は不満そうだった。 「むぅ、早い」 「文句言わないの。待ち合わせ、九時よ」 「え、そんな事聞いてねぇよ」 跳び起きた彼に笑いそうになる。慌てるくらいなら早く準備をすればいいと思うが、おもしろいから言わない。 「準備、準備。姫崎さん、洗面所借りる!」 「どうぞ」 服を持ったまま走り回っている彼を視線だけで追い掛ける。慌てているところを見ると、やはりまだ子供だ。 叉玖が肩から現れて、小さく鳴いた。その首には、夕鶴が朝につけた黒いリボンがある。 「叉玖もたまにはお洒落しなくちゃね」 その頭を撫でながら言うと、自分の部屋に向かう。準備しないといけないのは自分も一緒。 別にそんなに気合いの入れた服ではなくてもいいだろうから、楽に着れるワンピースを取り出す。そして黒のスキニーと。 それを着ると、部屋の中にある鏡で髪を結い上げた。洗面所には猛がいるから、自分が向かえば邪魔になる。 「よし、これでいいか」 鞄を手に持つと、夕鶴の準備は完成。元々派手過ぎる事を嫌うのでいつもシンプルだ。 朝ご飯を一人で食べていると、猛が駆け回る音が聞こえた。まだ準備が出来てないのか。 「男の子の方が準備に時間かけるってどうよ?」 「夕鶴、僕も行くー」 いつの間にか人の姿に変わっていた叉玖は、そう言いながら目玉焼きを横から掻っ攫う。 「あ、こら叉玖!」 気付いた時にはもう食べられた後。うなだれる自分と満足そうな叉玖を交互に見て、猛の顔には苦笑が浮かぶ。 「俺の食べる?」 目玉焼きを差し出しされたが断った。流石に食べ盛りであろう彼から朝ご飯を奪うのは申し訳ない。 「別に、私はご飯と味噌汁で十分だから」 目玉焼きとベーコンがついているのは猛がいるから。夕鶴はベーコンも叉玖に取られたが、そんなに食べる訳ではないので気にしない。
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