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駄目だ、もう我慢出来ない。何故、今日に限ってこんなに見られるのか。 「……ごめん、眞智。私屋上行くわ」 「また?別にいいけど、どうしていつも教室にいないの?」 自分は暇さえあれば屋上に向かうのだと彼女は思っているらしい。 だが実際は、大量の霊がいるこの教室に堪えられないだけだった。 「……ここは多いから」 「人が?確かに多いわよね。そういえば夕鶴、人込みとか嫌いだったし」 行ってらっしゃい。ひらひら手を振ってくれる眞智に笑いかける。 人込みが嫌いなのも、生きている人間に混じって霊がいるから。だから嫌い。 しかし、彼女は見えないので気付いていないのも仕方ない事だろう。 「行ってきます」 「あ、待って夕鶴。屋上って立入禁止でしょ?どうやって入ってるの」 探るように細められた瞳、再び威嚇する叉玖。また、違和感を感じる。 なんだろう。最近感じるようになってしまったこの違和感は。 「……企業秘密」 「なにそれー。まぁ、いいや」 笑いかけてくる眞智に笑みを返して、慌てて教室を出ていった。 さっき感じたのとは違う、居心地の悪さがある。眞智が眞智でないような違和感も。 「……なんなのよ」 気持ちが悪い。何かすっきりしないこの心の中が嫌。 でも違和感の原因が分からない。そして何故叉玖が威嚇をするのかも。 探るような眞智の眼差し。見た事もないような冷たい色をしていた。 頭がこんがらがってくる。これはもう、考える事を諦めた方がいいかもしれない。 目の前に屋上へ続く扉を見つけ、夕鶴は無意識に安堵の息を吐いていた。
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