03

17/42
前へ
/213ページ
次へ
ここまで驚かれるとは思ってなかった夕鶴は固まる。眞智の声を聞いたのか、言い争っていた恢達もこちらに来る。 「おはよう、姫」 「おは……」 「あぁ!?」 光輝の挨拶を遮るようにして、猛が恢を指差しながら叫ぶ。今日はよく叫ばれる日だと、関係ない事を考える。 指を差されて叫ばれた張本人は、流石にその反応に驚いたようだった。目を見開いている。 「な、何だよ」 視線を逸らさず凝視している猛に、苦笑を浮かべながら問い掛ける恢。あんなに失礼な反応でも怒らない。 「おはようございます、先輩」 「かいー!!」 とりあえず、苦笑しながら先程の挨拶に返事をする。と、叉玖が勢いよく彼に飛び付いた。 それを受け止めて笑う恢を見ながら、猛は視線をさ迷わせている。助けを求める視線を向けられ、小さく頷く。 「えと、はじめまして?」 「君、誰?夕鶴ちゃんの何?」 いきなり腕を引っ張られて光輝の胸にぶつかった。それを理解したと同時に眉を寄せる。 「離してください。この子は一ヶ月預かる事になった三木猛です。猛、この馴れ馴れしい人は大野光輝先輩」 思いきり腕を振り払って、光輝を猛に紹介する。再び伸ばされる腕をかい潜り、次は恢の側に立つ。 「この人は鴉島井恢先輩。私を守ってくれる人。そしてもう一人の女の子が来巳眞智よ」 全員の紹介が終わると、猛が頭を下げた。その表情を見ると、あまり好印象だと言えないようだ。 恢も眞智も癖のある人物だから、初対面から好きになれとは言えない。これからゆっくり知っていけばいいと思う。 それにしても、先程から猛が話さない。心配になって顔を覗き込むと、無理矢理作ったような笑みを向けられた。 人懐っこい笑顔ではない事に眉を寄せる。無理をしている時のこの笑顔は、全然可愛くない。 「どうしたの?」 頭に手を乗せて問い掛ける。子供扱いするなと言われそうだが、今回は仕方ない事だ。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加