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「行きましょうか」 少し気まずいこの空気に堪えられなくなったのか、夕鶴が言う。全員頷いて、眞智を先頭に歩き出した。 「場所は?」 「バスに乗ったらすぐよ」 向かう場所はバス停らしい。眞智と夕鶴が並んで歩くから、猛は恢と並ぶ羽目になる。 無言だ。とても気まずくて、今すぐにでも前を歩いている彼女の元に行きたいくらい。 だが横にいる恢はそう思ってなかったようで。普通にこちらへ話しかけて来た。 「神隠しに狙われてるんだってな」 「あ、はい」 いきなり聞かれて少し戸惑ったが、それでも返事を返す。彼は何か考えるように顎に手を当てて、それから夕鶴と自分を交互に見る。 「姫との関係は?」 「え!?あぁ、一応親戚です」 何を考えているのだろう。夕鶴との関係を聞くなんて質問の意味が分からない。少し長い前髪に表情が隠れて、考えが読めない。 男にしては少し長い外跳ねの髪は綺麗な青色で、つい凝視してしまう。それに気付いたのか、視線が向く。漆黒の瞳からはやはり感情を読み取れなかった。 ―――――――――――――― ずっと無言のまま見られ続けるのは、流石の恢でも居心地の悪さを感じてしまう。 「なんだ、さっきから」 堪えられなくなって問い掛けると、彼は少し驚いたようだった。その瞳が小さく見開かれる。 「……質問、もうないですか?」 「あぁ、もう一つだけ。お前は何を『して』狙われた?」 猛の表情が強張る。それだけで彼が何かやったのだと核心した。何もないならこんな表情をするはずがない。 「神隠しは意味もなく連れ去るような事はほとんどない。たまにそういう事をする奴はいるが、ほとんどは意味がある」 弱すぎる霊は適当に連れていこうとする事が多いが、強い霊はそんな事をしない。なら、彼の何かが原因だとよく分かった。 「答えろ」 「……俺は、ただ」 唇を噛んで、猛は俯いてしまった。恢はそんな彼を見ながら話し出すのを待つ。
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