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駆け寄ってくる叉玖を抱き上げて、夕鶴は後ろにいる男二人に笑みを向ける。
「早く乗りましょう?」
二人は中々動かない。早くしないと、せっかくやってきたバスが動き出してしまう。
慌てて乗ると、夕鶴達は1番後ろにある四人席を陣取った。叉玖は自分の膝の上にいる。
今日、遊びに行く遊園地は結構近い場所にあった。バス停を三つ越えた先にあるらしい。
遊園地に向かうまでの間。夕鶴は恢から、先程聞いた猛の狙われる理由を教えてもらった。
「……へぇ、神隠しの森にか」
言葉に何の感情も込めなかったが、表情は険しいはず。自分は、異端だからと虐げられるのが大嫌いだ。
それは夕鶴の過去によるもので、また普通の徒人と何も変わらないのに虐げられるのはおかしいと思っているから。
「猛、そういう人には一度くらい怖い思いをさせても大丈夫よ。浮遊霊なら、優しくしたら言う事を聞いてくれるわ」
「いや、駄目でしょう」
真顔の自分にツッコミを入れる眞智。確かに、それではますます怖がられるかもしれない。
でも許せない。何も知らないくせに。自分達がいつだって徒人を殺せる事を理解していない。
「いっその事、呪い殺せたらいいのに」
「姫が言ったら本気に聞こえるからやめろ」
冗談でもそういう事は言うものではないのは分かる。言魂使いの夕鶴なら尚の事だろう。
「いいんだよ姫崎さん。俺はこれでいい」
皆に嫌われてる訳じゃない。恐れられてる訳じゃない。猛にはちゃんと友達も居る。
それを聞いたら引き下がるしかない。友達がどれだけ救いになるか、自分は1番よく知っている。
「そう、猛は強いわね」
自分なら多分堪えられなかった。呪い殺そうと考えたら、夕鶴は簡単にそれが出来るから。
もしかしたらこの力を、虐めてくる徒人を脅す事に使用していたかもしれない。
「とりあえず、その話はそこまで。俺が言いたいのは猛だっけ?こいつの狙われてる理由だ」
恢に話を遮られてまとめられる。ここはやはり年上としての威厳があるからか。
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