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『くれないなら、力ずくだよ?』 にやりと可愛い顔に不釣り合いな笑みが浮かぶ。見るものを凍り付かせるような。 「出来るものなら。ご丁寧に異界にまで連れてってくれて」 ふと気付いた。いつの間にか人がどこにもいない。いつから消えていたのか。自分が攻撃された時から居なかった気がする。 「姫の怪我が酷いな、下がってろ。眞智は手当てを」 「夕鶴は僕が守るのー!!」 恢は一歩前に出て神隠しの気を引き寄せた。その間に、眞智が夕鶴を引きずって猛の側に向かう。 叉玖が髪の毛を逆立てて威嚇する。いつの間にか帽子を脱ぎ捨てて、尻尾まで現れている。 『あはは、何人来ても変わらないよ?』 馬鹿にしたような声で笑いながら、神隠しはそのままの体制。構える事も何もしない。それが少し不安だった。 「〈此の者を癒せ〉」 自分の掌から溢れる光が、傷口を癒していく。心配そうにこちらを見る猛に気付いて少し笑う。 「あれを見なさい、猛。あれが霊力者と半妖の一番の違い」 指差したのは恢の居る場所。そちらを見て、猛が息を呑んだのが分かった。 彼の背中から巨大な黒い翼が生えている。いつ見ても美しいと感じる、漆黒の翼が。 「俺、この翼あんま好きじゃねぇんだよ。だからじろじろ見んな」 困ったような笑顔と声に、猛は慌てて視線を逸らしていた。しかし表情は不思議そうなものて、。 「嫌よ、あれは自分が人とは違うっていうのをはっきり示すものだから」 横にいた眞智も苦笑する。彼女も半妖なので、あれを嫌がる気持ちはよく分かるのだと言う。 「あれは、一体……」 「天狗との合いの子よ。私は九尾の狐との」 いつの間に覚醒したのか、眞智からは白く綺麗な耳と九尾の尻尾が生えていた。
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