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先程まで笑みを浮かべていたはずの神隠しの表情が、その二人を見てみるみる険しくなる。 『えー、半妖二匹なんて面倒だから嫌!今日は帰る!!』 駄々っ子のように手足をばたばたさせる彼女の頬を、鎌鼬が掠った。青白い頬を血が垂れる。 「黙れよ、餓鬼」 鎌鼬で攻撃したのは恢だ。夕鶴が見た事ないような冷酷な瞳。いや、光輝の事件の時に一度だけ見た事があった。 「夕鶴を傷付けて、ただですむと思う?」 眞智も本気のようだった。彼女の回りには、何個もの青白い狐火が浮かんでいる。 『ふふ、流石は人ならざるもの。血の気が多いわね』 耳障りな笑い声が回りに響く。恢と眞智の表情は険しい。それを気にする事なく、神隠しの視線は真っ直ぐ夕鶴に注がれる。 『貴方だけは許さない。私の遊び相手、返してよ』 無表情で手を前に出した瞬間、目の前に小柄な影が飛び出す。それは両手を前に出し、甲高い声で叫ぶ。 「〈我は我に有らず。我は、主を守る盾となる〉!!」 高い声だった。まるで子供のような。いや、実際子供の姿をしているのだ。 「叉玖、止めて!」 夕鶴の叫びを聞いているのに、彼は動かない。両手からは白い炎が溢れ出して神隠しの攻撃を防ぐ。 「叉玖!」 「大変!」 眞智と恢も加勢して、神隠しの攻撃と彼らの力がぶつかり合う。押されているのはあちら。一対三では当たり前だが。 『あぁもう、欝陶しいわね。覚えておきなさい、女。私は絶対に貴方を殺すわ!』 「やれるものならやってみなさい。返り討ちよ」 『守られてばかりのお姫様のくせに。貴方しかいない時を狙ってあ・げ・る』 きゃはは。という笑い声を最後に、神隠しの姿も気配も跡形もなく消え去った。
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