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「そう、行ってらっしゃい。楽しんでね」 「うん、夕鶴も後で一緒乗ろー!」 固まった自分に気付かずに、叉玖は手招きしている眞智の方に駆けていった。そろそろ順番なのだろう。 それにしても、何故乗らなかったと思っているのか。後で乗るならここにいる意味がない。 横で恢は先程からずっと笑っている。流石の自分も、笑われ続けたら居心地が悪い。 「私、飲み物買ってきます」 「あぁ、行ってらっしゃい」 まだ笑い続けている恢を一睨みして駆け出す。あそこにいるのは恥ずかしい。叉玖とのやり取りを見られているから。 全く、彼はどこで何をしててもまるで気にしないのだ。人じゃないから仕方ないが。 「……恥ずかしい子」 そう呟いた表情は、自分でも緩んでいると自覚していた。何だかんだ言って、叉玖は大切な子であるのには変わらない。 近くにある売店まで行くと、飲み物を何にしようか悩む。しかし、結局は自分の好きな紅茶にした。 「はい、どうぞ」 渡されたのを受け取ってお金を払おうとした時、後ろから手を伸ばされる。 「ちょうどだね。ありがとう」 「え?」 その手の持ち主は自分の飲み物代を払ってくれたらしい。慌てて振り向くと、それは恢だった。 「先輩」 「こういうのって、普通男が払うだろ?」 デートの時なら分かるが、今はそんな甘いものじないのに。夕鶴の表情からそれを読み取っても、恢は頭に手を置くだけ。 反論しても無駄だと分かったから、自分はお礼を言って有り難く奢ってもらった。 「飲み物でよかったです。もしもう少し高かったら絶対に拒んでた」 「だろうな。姫は遠慮し過ぎるから」 そういえば、恢は姫としか呼んでくれない。その呼び名は巫女姫としか見てもらえないような気がして嫌だった。
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