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お化け屋敷から出てきた時、夕鶴達の姿はそこになかった。一気に三人の表情が強張る。 「……先輩」 「気にしすぎじゃねぇ。残滓がある」 恢が触れた場所には、猛が首に付けていたはずの数珠の欠片が落ちていた。 それを見て、思い切り眉間に皺を寄せてしまう。まさか、あの神隠しに連れ去られたのか。 「異界を作り出して、風をも自由に操る神隠しだ。あれでは弱かったんだな」 それだけではない。あの神隠しは、夕鶴を圧倒させる力があった。油断したとはいえ、彼女が二回も攻撃を受けるなんて。 「とりあえず捜すぞ。異界ならどこかに裂け目がある」 「はい!」 「夕鶴、すぐに行くからー!」 三人ばらばらの場所に向かって走り出す。全員が妖怪の血を引いているのだから、呼び寄せる事はたやすい。 眞智は唇を噛む。夕鶴の側に猛を置くんじゃなかった。先程攻めてきたから、もう来ないと思っていたのに。 よく考えたら、半妖がいない時に攻めるとかいうような事を言っていたはず。 耳元に、あの神隠しの耳障りな笑い声が聞こえた気がして首を振る。夕鶴は大丈夫だろうか。あの神隠しは強い。一人だと不安だ。 「……どこにいるの!」 唇を噛み締める。不安で不安で仕方ないし、人が多いから妖怪の姿にもなれない。あの方が捜しやすいのに。 だがそれは恢も同じ。呆れる程広大なこの遊園地の中で、目印もないのに捜し出すなんてほぼ不可能。 しかし諦めたらそこで終わり。前のように、夕鶴の匂いでも残っていたら楽なのに。 匂いで探そうにも、ここは匂いが入り交じっている。香水、食べ物。そして水や火薬の匂いもあって、彼女の匂いは分からない。 俯いて拳を握りしめた眞智は、ふと顔を上げた。呼ばれたのだ、誰かに。その呼ばれた場所を確認して、歓喜の声を上げる。 「偉いわ、叉玖!」 慌てて駆け出す自分の視線の先には、巨大な観覧車が回っていた。
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