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観覧車の場所まで来たはいいが、ここに着いても当たり前だが猛の姿はどこにも見当たらなかった。 異界に連れていかれたのなら、自分は手出し出来るのか。いや、しなくてはいけない。 目を閉じて集中する。そうしなければ、猛にへばり付いている自分の力の残滓を探せない。 「……あった」 案外簡単に見付かった。それは真っ直ぐ観覧車に伸びている。やはり観覧車が何かのヒントなのか。 そこに近寄る度に違和感を感じて足を止めた。なんというか、空気が変わるのだ。一歩進む度に、重くなる。 「正解ね」 異界がどこかにある。それは確からしい。後は場所さえ見つかればいい。観覧車に近寄って、じっくりと観察する。人は居ない。 ……居ない? 「なんで、っ!?」 何かが夕鶴の肩に突き刺さった。みるみる内に熱くなる傷口。そこから広がる、焼けるような痛み。 慌てて振り向いた自分の視線の先に居たのは、やはり予想していた通り。 「……猛」 猛だった。冷たい眼差しで、手に持つナイフから血が滴る。夕鶴は舌打ちをする。彼がこうなった原因は神隠ししか有り得ない。 「自分の手を汚さないつもりね」 「当たり前」 そう答えたのは猛。と気味の悪い笑みを浮かべていた。彼にそんな笑顔が似合う訳がないではないか。 夕鶴はため息をついて真っ直ぐそちらを見る。自分は今日、符をあまり持ってきていないのだが。 神隠しとこうやって正面から戦う事はないと思ったからだが、迂闊だったらしい。 「どれだけ戦えるかしら」 真っ直ぐ彼を見つめながら、自分の表情が少しだけ歪む。流石に不安になってきた。
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