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「まさか、じゃんけんになるなんて」 笑いながら言う夕鶴に、向かい合うようにして座っていた恢も苦笑を浮かべた。 今は夜。帰る前に一度だけ観覧車を乗る事にした自分達。しかし問題は、誰と一緒に乗るのかという事で。 揉めても迷惑になるという事で、じゃんけんをする事になった。結果、夕鶴と恢。眞智と猛と叉玖という組み合わせに決まったのだ。 「落ち込み方凄かったしな」 その言葉に眞智の姿を思い出す。自分と一緒に乗れなかったと言って、酷く落ち込んでいて。 「別に、乗れなかったくらいでそんなに落ち込まなくてもいいのに」 眞智が悔しいと思うくらい夕鶴と一緒にいたいと言ってくれたのは嬉しいが、あれ程落ち込むとは思わなかった。 「よかったな、姫」 そうやって側に居てくれる人がいて。恢はそう言っている事に気づき、自分は満面の笑みを浮かべる。 「はい。眞智がいて、叉玖がいて」 名前を上げていくと、恢の顔にも笑顔が浮かぶ。夕鶴はそんな彼に視線を向けると、とびきりの笑みを浮かべた。 「それと先輩も、側に居てくれるから」 「……え?」 虚をつかれて呆然としている恢。珍しく、驚いたのか瞳が真ん丸になっている。 彼が入るとは思っていなかったのだろう。眞智も叉玖も、自分とは長い付き合いだ。 だから名前が出るのは当たり前で。まさかつい最近会った彼が入るなんて、少し前までは夕鶴も思わなかった。 「先輩は、私を絶対に守ってくれるでしょう?いつもそうだわ」 「いつも?馬鹿言うな」 恢が呟くと、その手はゆっくりと夕鶴の腕に向かう。そこにある切り傷を優しく撫でたと思ったら、次は頬に移動。 優し過ぎるくらい優しい指先に、自分は金縛りにあったように動けなくなってしまう。 気付けば触れているのは指先ではなく、手全体で夕鶴の頬を包んでいた。
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