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神隠しに襲われる心配もなくなったから、猛は昨日のうちに家に帰った。 しかし夕鶴をえらく気に入ってくれたらしく、本格的に引っ越してくるらしい。今日はその準備で、引っ越すのは明後日だ。 いつものように手早く準備を終えて家を出る。学校に行く途中で眞智と会い、笑いながら登校して。 門の辺りで誰かと一緒にいるらしい恢の姿を見つけ、夕鶴は足を止めてしまった。 昨日の事を忘れた訳じゃない。忘れたくても忘れられない。でも、あの後の彼に変化はなく。変化といえば、帰り際に真剣な顔で言われた言葉。 『俺がお前を守るから。絶対に』 何か、再び自分に誓うような決意を秘めた眼差しと声音。あれ以外は普通だったので、彼は気にしていないのだろう。 「あ、先輩だ。恢先輩ー!」 眞智が大きく手を振って走り出す。夕鶴は大きくため息をつくと、その後をゆっくりと追い掛ける。 「あぁ、眞智と姫か。おはよう」 「おはようー」 恢に隠れて見えなかったが、彼はあの伊吹とか言う青年と一緒だった。 眞智も夕鶴も少しだけ顔をしかめたが、後はなんでもないというように挨拶を返す。 馴れ馴れしい人は好きではない自分にとって、この青年は苦手な存在でしかない。 「じゃあ、眞智。私先に行くわよ?」 「え、嫌!一緒に行くわよ」 楽しそうに会話をしていたから邪魔はしたくない。そう思ったのだが、別に大丈夫だったらしく。 彼女と共に教室に入ると、少しだけざわついている気がした。何かがあったのだろうか。 近くにいた人を捕まえて聞いてみると、今日は転校生がやってくるらしい。 だからこんなにざわついているのか。中学生じゃあるまいし、転校生くらい気にしなくていいと思うのだが。
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