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横に居る眞智に問いかけようとしてやめた。彼女もどこかはしゃいでいたから。 眞智の見た目は大人びているが、中身は子供っぽい。そのギャップがいいとか訳の分からない事を言われる事が多いらしい。 「楽しみね!」 「……えぇ」 深々とため息をついた。たかが転入生が来るというだけなのに、ここまで騒げるとは。 小さな声があちこちで上がっていた教室は、教師が入ってくると同時に静まり返る。 転入生の姿はない。興味もないから、夕鶴は机に突っ伏した。何か話しているが、全て聞き流す。ちょうどいい小守歌だ。 扉の開く音と、何人かの息を呑む音。そして感じるのは柔らかくて強い霊力。 音を立てて椅子から立ち上がった自分を気にする事なく、転入生は笑う。とても穏やかな笑顔で。 「はじめまして、神山 聖(かみやま ひじり)といいます」 深緑の肩まである髪に、澄んだ黒い瞳。女性みたいに整った顔の青年を、夕鶴は知っている。いや、知っていた。 「ひ、聖?」 まさか、彼がここにいる訳がない。しかしあの優しい笑顔と深緑の髪は確かに彼で。 夕鶴に視線を向けてきた聖は、大きな瞳をもっと大きくしてこちらを見ている。 「……夕鶴?」 そう呟いた瞬間、彼が勢いよく走り出して自分に抱き着いた。 回りから悲鳴が上がり、眞智も目を真ん丸にしている。しかしそんな事は関係ない。 「夕鶴、会いたかったです!」 「私も会いたかったわ、聖」 こちらに笑いかけてくれる彼は、当たり前だが記憶にあるよりも背が高くなっている。 小さい時も十分可愛い顔をしていたのだが、時を経て可愛いから綺麗に変わったようだった。
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