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彼がさっき使ったのは、自分の気のせいでなければ風の力だ。
「貴方、天狗ね?」
自分達霊力者の中には、妖怪と呼ばれるものの血を受け継ぐ者がいる。
多分目の前にいるこの青年はそれだ。
「よく分かったな。ついでに俺はお前より年上だ。敬語は?」
「天狗が何の用?」
聞いちゃいねぇ。ため息混じりに言われた言葉を無視する。
こんな怪しい奴に敬語は使いたくない。それに、守り人とは一体何なのか。
「守り人についてはあんま気にするな。ただ、お前をいろいろな魔から守るだけだ」
「守る?勝手な事言わないで。貴方に守られる筋合いはないわ」
夕鶴としては、守られる方がいい。ただ知らない人というのは少し抵抗がある。
その心を知っているのかいないのか、叉玖が夕鶴の肩から飛び降りる。
「叉玖?」
「お、なんだよ?」
恢に向かって歩いていくと、いきなり彼に飛び付いた。
慌てて叉玖を受け止める恢に甘えるように顔を擦り寄せる叉玖。
「……害はないって言いたいの?」
『ニィ』
返事を聞いてため息をつく。しかし叉玖が警戒しないのなら安心していいはずだ。
「鴉島井先輩ですよね。守り人って、具体的には何ですか?」
「お、やっと敬語使ったな。簡単に言えば、巫女姫を守って彼女の言う事を聞く奴だ」
それは主従関係を結んでいるみたいで自分は好きではない。
好きではないが、贅沢なんて言っていられないのだろう。
「よろしくお願いします」
「おぉ、任せろ」
口約束ではあるが、二人とも違える事はないだろうと思うのだ。
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