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「神山聖?」
昼休み、屋上でご飯を食べた時の恢の反応だ。眞智が話すのは見たまんまの事だけだが、それでも聖が半妖か霊力者だと分かる。
それにしても、それだけで彼がこんな露骨に反応する訳がない。何か理由があるのか。
夕鶴の表情から何が聞きたいか気付いたのか、恢はバツが悪そうに顔を反らす。
「有名なんだよ、神山家は。神に仕える家の中ではトップクラスで、新しい主の聖って奴は凄いらしい」
「聖が凄い?」
それはおかしい。自分の知っている聖は可愛くて泣き虫だ。いつもすぐに泣いて、その度に自分が原因を取り除いていた。
確か、幽霊を見ただけでも泣き出していた記憶がある。なのに、そんな聖が凄いなんて。
「……夕鶴、俺だって成長したんです」
ふと、いないはずの人物の声がして体が跳ねる。いつの間にそこにいたのか。扉にもたれかかっているのは間違いなく聖だ。
しかし何かが違う。先程見た柔らかい雰囲気も、柔らかい笑顔もそこには一つもない。
「なにしに来た」
威嚇するように姿勢を低くして、恢が押し殺したような声を出す。明らかに聖を敵視しているその雰囲気に戸惑う。
「誰かと思ったら、天狗じゃないですか。しぶとく生きていたんですね」
彼を一瞥した聖の顔に冷笑が浮かぶ。会わない間に随分といい性格になっているらしい。
それにしても、彼らの間には見えない繋がりがあるらしい。いや、正確には神山と天狗の間に。
それが何か分からないからなんとも言えないが、いい繋がりではないのは確かだろう。
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