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真夜中、一人の青年が学校の校庭に立っていた。漆黒のローブから覗く白い肌。その黒の瞳は、真っ直ぐ空を見ている。 不意に空気が揺れ、響いたのは何かの咆哮。現れた二体の龍は真っ直ぐ青年を見下ろして、赤い瞳を爛々と輝かせる。 「ちょうどいいですね」 青年にしては少しだけ高い声でそう呟くように言うと、彼は楽しそうに微笑んだ。 二体の龍が吠える。彼らは狙いを青年にしたらしい。勢いよく向かってくるが、それは見えない障壁に弾かれた。 低い声で威嚇の唸りをしながら、障壁の周りを回る龍。攻撃は全て防がれるので、苛立っているらしい。 余裕の表情でそれを眺めている青年は、ふと瞳を細めた。嫌な事を思い出したのだ。今日の昼に会った天狗の子の事を。 自分でも分からないくらい昔、自分達神山家の者は天狗に大切な人を奪われた。 そんな事があるから、神山家は代々天狗と仲が悪くて。もう天狗族はいないと思っていたのに。案外しつこいらしい。 「まさか、また奪う気ですかね」 青年――聖は低い声で呟いた。何千年前と同じように、また天狗は自分の大切な人を奪うのか。 そんな事はさせない。例え天狗を殺してでも、夕鶴だけは渡さない。 離れていても心配だった。自分にとって、英雄のような存在。いつも聖を助けてくれた彼女を、今度は自分が守りたい。 その為にはやはり、あの天狗が邪魔。彼女の側にいつもいる、九尾の狐も少し邪魔かもしれないが。 「仕方ないですね」 懐から符を取り出して、聖は再び笑みを浮かべる。相変わらずあの二体の龍は障壁にぶつかっているが、中々壊れない。 「……貴方達を使いましょう」 聖の言葉に反応してか、符が凄まじい光を放つ。 そして――。   
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