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夕鶴は龍の咆哮を聞いたような気がして、窓の外を見た。しかし何もいない、何も感じない。疲れているのか。
「夕鶴さん?」
自分の部屋に荷物を運んでいた猛が、そんな様子に気付いたのか不思議そうに問いかけてくる。
何でもないと首を振る。それに安心したのか再び作業に戻る彼から、視線を手元に向けた。
猛の引っ越す日時が速まり、今まで買い出しに出掛けていた。彼が使うコップや食器。歯磨きといった日用品が大量だ。
「猛、早く片付けましょう」
最近、嫌な予感や気配などを感じる事が多くなった気がする。多分それは、恢や眞智のような半妖が側にいるから。
互いの力に共鳴して、より強い力を引き起こしている。まだまだ強くなるのか、自分の中にある霊力は。
「これ以上強くなってどうするのよ」
どれだけ使っても、尽きる事はない自分の霊力。最早これ以上強くなる必要はないはずなのに。
「夕鶴さん、これどこ?」
「お風呂場に置いといて」
猛はいつの間にか、自分の事を姫崎さんから夕鶴さんと呼ぶようにしたらしい。
ますます家族に近付いたと思うと少し嬉しかった。家族なんて居なかった自分にとって、彼は初めての家族だ。
『ミィ』
叉玖も嬉しそうに見える。人が一人増えただけで家の中が賑やかになるなんて、小さい時の夕鶴は知らなかった。
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