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学校に着いた夕鶴は首を傾げた。何かが違うような違和感がある。空気が重い。
これは負の感情が充満している時に感じる気配。今回のこれは、多分憤怒の感情だろう。肌を刺すような傷みがある。
「嫌な感じ」
眞智が眉を寄せる。叉玖はしきりに足元を気にしていた。式にしか気付かないような何かがあるのか。
「夕鶴」
目の前に現れた聖を見て、瞳を見開く。この空間に充満している憤怒の気配は、彼からしている。
という事は聖が怒っているのか、それとも聖にいる何かが怒っているのか。
夕鶴にはそれが何か分からない。分からないが、いいものではないのだけは確かだった。
「おはよう、聖」
「おはようございます。夕鶴、天狗はいないんですか?」
天敵なのか。何故こうも聖は天狗である恢を嫌う。聞いてみたい気がするのだが、多分教えてはもらえない。
頷く事しかしなかった自分だが、それだけでも聖は満足そうな笑みを浮かべる。
「なら、夕鶴の側にいれる」
「夕鶴の側にいるのは私よ。邪魔しないで」
眞智が威嚇をするが、あちらは彼女を一瞥するだけ。その口元に浮かぶ笑顔を見て、嫌な予感がした。
「ふん、犬もどきが偉そうに。キャンキャン吠えないでくださいよ」
「なんですって!?」
あぁ、やはり喧嘩になってしまった。自分は額に手を当てて、一つため息を零す。
言い争いをしている二人とも、口が悪くて驚いた。聖はともかく、女である眞智は少し言葉遣いを改めた方がいい。
そんなくだらない事を考えながら、夕鶴は二人を放置して歩きだした。
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