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「え、夕鶴!?」 「待ってくださいよ!」 慌てて追いかけてくる二人を一瞥してから、深く深くため息をついた。 煩いのは嫌いなのだ。例え眞智や聖が相手だろうと、嫌いなものは嫌いで。 「煩くしないで。頭が痛くなるわ」 「ご、ごめん」 「すみません」 うなだれた二人はまるで捨てられた犬のようで。一瞬だけ言い過ぎたかと思うが、ここで甘やかしたら調子にのるだろう。 「分かったら喧嘩しない!」 『……はい』 二人同時に返事をして、喧嘩はなくなった。仕方ないので、今回だけはこれで許す。 まだ聖からは憤怒の気配がある。しかし彼が怒っている訳じゃない。なら、何がこんなに怒っているのか。 「守護獣かしら?」 聖にも、夕鶴に憑いている叉玖と同じような存在がいる可能性だってない訳ではなくて。 だからその守護獣が何かの理由で怒っている、という事ならまだ分かるのだが。 「夕鶴?」 眞智にいきなり覗き込まれ、つい体を反らしてしまう。その瞬間、彼女がとても悲しそうな顔をした事に気付いた。 やってしまったと思って謝ろうとした時、目の前の眞智が笑う。悲しそうな笑顔で。 「ごめん、夕鶴。驚かしたわよね」 傷付けたと分かったから、夕鶴は頷かない。彼女が避けられるのを嫌いな事くらい、分かっていたのに。 というより、半妖や霊力者は知らない間に避けられるという行為を嫌うのだ。
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