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おかしい。帰りながら夕鶴は首を傾げた。先程から眞智に電話をしているのに、彼女は出ない。 今まで眞智が夕鶴からの電話に出ない事は一度もなかった。どうしたのか。なにかあったのか。 急に不安になって、その場に立ち止まった。自分にある霊力は結構万能で、応用すれば何にでも役に立つ。 目を閉じて自分の霊力を、街全体に広がらせる。どこかに彼女の気配があるはずだ。人と狐の合いの子である、あの気配が。 しかし、その気配を見付かる前になにかに弾かれるようにして意識が戻って来た。 「……おかしい」 今回は口に出してしまうくらい、違和感がある。 自分の力を弾く事が出来るくらいの力の持ち主がこの街に居て、その人物は眞智を見つけて欲しくないのか。 それともただ自分の存在をばらしたくないが故の行動か。分からないけど怪し過ぎる。 眞智になにかあったと考えるべきだろう。そして次に狙われるのは、恢か猛のどちらかだという事も分かっている。 「ねぇ」 いつもいる浮遊霊。これは恢の家を知っている。夕鶴は知らないから、これに伝言を頼むしかない。 「先輩に伝えて。私の家に今すぐ来いって。お願い」 自分のお願いが効いたのかなんなのか。頷くようなそぶりを見せて、浮遊霊は空を飛んでいく。 スピード自体はあまり早くないが、それでも今日中にはなんとかなるだろう。 「残るは猛ね」 彼は家にいるはず。急いで帰った方がいい。急ぎ足になって駆けていく夕鶴の後ろ姿を、漆黒の獣が見つめていた。
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