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誰が何の理由で式神を放ったのか分からない。分からないが、完全に喧嘩を売られたと考えてもいいだろう。 「……ちょうどいいわ。今、私は機嫌が悪いの」 夕鶴の足元が光り、それは強い風となって髪がうねる。覚醒と呼ばれる、霊力者や半妖が力を解放させた時の現象だ。 人それぞれだが、自分の場合は光り輝く螺旋状の鎖が周りを渦巻く。これは夕鶴の霊力が塊になったもの。 「私に喧嘩を売った事、後悔しなさい!」 凄まじい風が漆黒の獣に向かっていくが、獣は慌てない。素早い動きで風を避けると、すぐにこちらへ向かってきた。 「ふざけるな!」 怒声が壁になり、獣を阻む。一回転してもう一度襲い掛かる。しかしそれもまた、作り出す壁に阻まれた。 「私の家に押しかけたのは間違いよ」 家は自分の霊力が充満しており、いつもよりも力が強くなる。そこに襲いに来るなんて、馬鹿だと思う。 獣はやっと襲い掛かる事を止め、真っ直ぐこちらを見た。その瞳に宿る理性のようなものに気付いて、首を傾げる。 おかしい。先程までは理性を感じられる瞳をしていなかった。とすると、獣の主はそれを透して様子を見ているのだろう。 それは力の強い霊力者にしか出来ない、高度な技術。この式神な持ち主はそこそこ力がある者らしい。 「貴方、なにをしたいの?」 式神を透してこちらを見ているのなら会話も出来るはずという、夕鶴の予想は当たっていた。 『お前達に、忠告を』 男とも、女ともとれる声で獣が話し出す。その言葉にみるみる眉が寄っていくのが、自分でも分かる。
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